WORKS
003.
湖南アルプスの家
House in Alps Konan
Design : Kouichi Kimura
Photograph : Kei Nakajima
この住宅は滋賀県の琵琶湖の南部に広がる湖南アルプスの裾野に計画された
30代の夫婦とその子供のための家である。

少し歩けば家族連れで賑わうキャンプ場もあるこのエリアは四季を肌で感じとることができ、 住宅の内部、生活にその自然を取り込むことが施主の要望であり設計上の重要な課題であった。しかし、周り全てに自然が残っていたわけではなく、大阪や京都に通勤可能なこのエリアは新しく区画整理された住宅が存在するがゆえに人通りが多く、単純な解決策として大開口を用いて自然を取り込むようにすれば、プライバシーを守る余計な壁を作らざるを得なくなってくる。この相反する条件の中で、自然と生活とのコンテクストを切り離さずに互いに浸透してくように計画を進めていった。
まず敷地条件の中からボリュームを決定し、一旦、自然と切り離した後、外観は出来るだけニュートラルな形状と質感を選択し、再び自然に近づいて行く。
そして新しくできた無愛想なヴォイドにプライバシーを考慮しながら小さなボリュームを挿入して行く。
最初に決定されたヴォイドは、綿密に組み込まれた小さいボリュームによって切り取られ、空白になりそこへ自然が浸透してく。
切り取られた空間は自然の浸透によって修正され再び元のボリュームを取り戻す。
この大胆な操作によって住宅内部は外部(自然)との境界線を曖昧にし、もはや単純な区別は消え去ってしまう。 玄関の扉を開けると常識を否定するように壁の無い廊下が現れ、通常隠されるべき場所であるトイレ、浴室へと導いていく、重要なエレメントとなるこの廊下はキッチンやリビング、侵入してきた自然(庭)にかろうじて接しながら、意識的な決定、無意識の感覚によって外部にも内部にもなる事が出来る、様々な体験を与えてくれる真の建築的プロムナードである。